📚第25回 本格ミステリ大賞候補作 一覧📚
【小説部門 候補作】
- \ミステリも人間ドラマも楽しみたい人に/
逸木 裕『彼女が探偵でなければ』 - \全てのミステリ好きに/
潮谷 験『伯爵と三つの棺』 - \騙されたい人やミステリ中級者に/
白井 智之『ぼくは化け物きみは怪物』 - \特殊設定ミステリ好きの人に/
南海 遊『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』 - \緻密なミステリが好きな人に/
夕木 春央『サロメの断頭台』
【評論・研究部門 候補作】
- \”本格ミステリ”を味わいたい人に/
飯城勇三『本格ミステリの構造解析――奇想と叙述と推理の迷宮』 - \クリスティ作品好きに/
大矢 博子『クリスティを読む! ミステリの女王の名作入門講座』 - \熱心なミステリファンに/
法月綸太郎,新保博久『死体置場で待ち合わせ 新保博久・法月綸太郎 往復書簡』 - \”闇バイト”の真相に関心のある人に/
杉江松恋『日本の犯罪小説』 - \ミステリ初心者から上級者まで幅広い方に/
千街晶之『ミステリから見た「二○二○年」』
📚第25回 本格ミステリ大賞<小説部門>候補作紹介📚

彼女が探偵でなければ
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【あらすじ】
こうなることを知っていたら、わたしは探偵をやめていただろうか。
森田みどりは、高校時代に探偵の真似事をして以来、人の〈本性〉を暴くことに執着して生きてきた。気づけば二児の母となり、探偵社では部下を育てる立場に。時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬のコード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)。〈子どもたち〉をめぐる謎にのめり込むうちに彼女は、真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていく。謎解きが生んだ犠牲に光は差すのか。痛切で美しい全5編。
- 人は誰しも複雑な面を持っていて、それが最大の謎だなと思った。視点と語りの変化が鮮やか。(konohaさん)
- 探偵という職業ではなく、探偵という生き物が描かれているところが魅力的な作品。(えみさん)

伯爵と三つの棺
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【あらすじ】
時代の濁流が兄弟の運命を翻弄する。
フランス革命が起き、封建制度が崩壊するヨーロッパの小国で、元・吟遊詩人が射殺された。
容疑者は「四つ首城」の改修をまかされていた三兄弟。五人の関係者が襲撃者を目撃したが、犯人を特定することはできなかった。三兄弟は容姿が似通っている三つ子だったからだ。
DNA鑑定も指紋鑑定も存在しない時代に、探偵は、純粋な論理のみで犯人を特定することができるのか?
- ミステリの舞台としては珍しい時代設定、科学捜査ができない中でロジックによる解明、キャラなどがとても魅力的です。また、これまで特殊設定が多い潮谷さんの作品の中でもとても読みやすい作品です。(さっちゃんさん)
- 長年ミステリを読んでいると以前に読んだ作品を突如思い出す様な物語に出会う事がある。ただ私の場合は思い出すだけで謎の完全解明には至らない訳だが、後に『やっぱり関係していたんだ!』と小さな優越感に1人で浸るだけ。本作もそんな箇所が3箇所程あったのだが、最後の最後まで楽しく翻弄された。真犯人が解明された後にも残る謎。何重にも施された謎にはワクワクさせられた。(ゆのんさん)

ぼくは化け物きみは怪物
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【あらすじ】
クラスメイト襲撃事件を捜査する小学校の名探偵。
滅亡に瀕した人類に命運を託された〝怪物”。
郭町の連続毒殺事件に巻き込まれた遊女。
異星生物のバラバラ死体を掘り起こした三人組。
見世物小屋(フリークショー)の怪事件を予言した〝天使の子”。
凶暴な奇想に潜む、無垢な衝動があなたを突き刺す。
白井智之は容赦しない。
- 凄い。作者は新しい境地を切り開いた、そう感じる。作者以外には考えつかないであろう、奇想天外な状況の下で起きる殺人事件で「異形」の探偵達が繰り広げる多重推理。これまで通りの作者の持ち味、独壇場。私が驚いたのはそれぞれの話のオチ。鳥肌ものの切れ味の結末から滲み出るのは登場人物達の苦しみと悲しみだ。(みっちゃんさん)
- 奇想天外に広がるアイデア。読者を騙すのが楽しくて仕方ないのではと思わせるトリッキーさが魅力。(yukaringさん)

永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした
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【あらすじ】
『館』x『密室』x『タイムループ』の三重奏(トリプル)本格ミステリ。
「私の目を、最後まで見つめていて」
そう告げた『道連れの魔女』リリィがヒースクリフの瞳を見ながら絶命すると、二人は1日前に戻っていた。
母の危篤を知った没落貴族ブラッドベリ家の長男・ヒースクリフは、3年ぶりに生家・永劫館(えいごうかん)に急ぎ帰るが母の死に目には会えず、葬儀と遺言状の公開を取り仕切ることとなった。
葬儀の参加者は11名。ヒースクリフ、最愛の妹、叔父、従兄弟、執事長、料理人、メイド、牧師、母の親友、名探偵、そして魔女。
大嵐により陸の孤島(クローズド・サークル)と化した永劫館で起こる、最愛の妹の密室殺人と魔女の連続殺人。そして魔女の『死に戻り』で繰り返されるこの超連続殺人事件の謎と真犯人を、ヒースクリフは解き明かすことができるのかーー
- 館、密室、クロサー。それだけでワクワクするのに、それに「タイムリープ」が絡む。魔女?死に戻り?タイムループの条件は?…なんて魅力的な特殊設定ミステリだろう。息を詰めるようにして注意深く読み進めていたはずなのに、突然やってきた?マークと怒涛の展開。(aquamarineさん)
- 解決編は圧巻の一言。想像だにしていなかった方向から殴られて思わず声が漏れた。設定と真相がかっちりと噛み合った極上の読み心地。最高に好き。(カノコさん)

サロメの断頭台
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【あらすじ】
全ての謎が解けるとき、『サロメの断頭台』が読者を待つ。
天才芸術家の死、秘密を抱えた舞台女優、盗作事件に贋作事件、そして見立て殺人。
大正ミステリを描き抜く『方舟』著者の本格長編。
油絵画家の井口は、元泥棒の蓮野を通訳として連れて、祖父と縁のあったオランダの富豪、ロデウィック氏の元を訪ねた。
美術品の収集家でもあるロデウィック氏は翌日、井口のアトリエで彼の絵を見て、「そっくりな作品をアメリカで見た」と気が付いた。
未発表の絵を、誰がどうして剽窃したのか?
盗作犯を探すうちに、井口の周りで戯曲『サロメ』に擬えたと思われる連続殺人が発生してーー
- これは面白かった。大正を舞台に巻き起こる戯曲サロメになぞられた連続見立て殺人。大正の雰囲気が漂ってくる緩やかな展開から一気に押し寄せる綿密なプロットによる解決編とお見事なホワイダニット。そして読者は真相の果てに現れた“サロメの断頭台”を前に絶望するのみ。(オフィーリアさん)
- 緻密に書き込まれたミステリーだったと思う。その分先が長く、話の流れが遅々として進んでいくせいなのか、読み手の覚悟というか忍耐も試されたように思った(空のかなたさん)
📚第25回 本格ミステリ大賞<評論・研究部門>候補作紹介📚

本格ミステリの構造解析――奇想と叙述と推理の迷宮
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【あらすじ】
他に類を見ない特殊な構造を持つ唯一無二の小説ジャンル〈本格ミステリ〉。その特殊な構造を解析し、その特殊な構造が生まれた理由を考察した評論書!
作品を考察する場合〈何を=テーマ〉、〈どう描いているか=舞台や人物〉だが、本格ミステリの場合〈何を=トリックやプロット上の仕掛け=奇想〉、〈どう描いているか=叙述〉に加えて〈どう解き明かすか=推理〉が加わる。奇想、叙述、推理を本格ミステリの構造に組み込んで解析した評論書。
- 本格ミステリだけにスポットをあてて解析してくれる。読み応えはあるけれど、本格ミステリを味わうには持ってこいの評論書。

クリスティを読む!: ミステリの女王の名作入門講座 (キイ・ライブラリー)
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【あらすじ】
“ミステリの女王”の数々の名作は、なぜこんなに面白いのか?
数々の名作が世界中で読まれ、翻訳され、映像化・舞台化され、没後48年を経ても変わらぬ人気を保ち続ける──まさしくミステリの女王、アガサ・クリスティ。大人気カルチャー講座「アガサ・クリスティを読む」の講師を務める書評家が、〈探偵〉〈舞台と時代〉〈人間関係〉そして〈騙(だま)しのテクニック〉に焦点を当て、各章でテーマに沿ったおすすめ作品を紹介しながら魅力を丁寧に語ります。最終章〈読者をいかにミスリードするか〉では、女王の驚くべきテクニックをじっくり解説。クリスティのすごさを実感できる、入門に最適な一冊!
- 作品解説だけでなくクリスティ関連の小ネタも併せて楽しめる。(makoさん)
- 親しみやすいライトな語り口だけど、中身はなかなかマニアック。このテーマならあの作品かな……?と予想するのもいいし、未読の作品は読んでみようかなとそそられるし。基本的にはネタバレ無しだけど、終盤では特定の作品についてネタを明かしながら具体的に騙しの技法を解説していて、クリスティの大胆かつ周到な書きぶりを堪能できました。良書!(Cinitaさん)

死体置場で待ち合わせ 新保博久・法月綸太郎 往復書簡
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【あらすじ】
圧倒的な博覧強記のミステリ評論家×ミステリ実作者にしてカリスマ評論家
いつまでも終わらない大好きなミステリの話。
「モルグ街の殺人」の定説の疑問、クリスティー失踪の真相、 芥川龍之介「藪の中」の推理、坂口安吾『復員殺人事件』解決編への挑戦、
さらには多重推理、特殊設定など“ミステリの現在”を読み解く―― 何度読んでも新発見をする小説は 本当にあるのです。
- ミステリ愛好者として理解を深めたり未知な部分を教えてくれる好著。(パトラッシュさん)
- 往復書簡の中でいくつかのトピック(倒叙、坂口安吾、藪の中etc.)が重点的に取り上げられており、「そうはいっても原典に当たるの面倒……」という読者の為に付録として多くの作品がそのまま載っている。(しい太さん)

日本の犯罪小説
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【あらすじ】
なぜ小説の犯罪者は、かくも魅力的なのか。
昭和の頃、小説の中の犯罪者は、固定観念を打ち砕く革命家のようでもあった。激しい怒りと、震えるような苛立ちが彼らを突き動かしていた。作家たちは、彼らに何を仮託していたのか。そして、社会の変化と成熟は、犯罪小説をどう変容させたのか。大藪春彦、江戸川乱歩、松本清張、阿佐田哲也、池波正太郎、小池真理子、宮部みゆき……18人の作家の創作の秘密に、「犯罪」のキーワードから迫る、迫真の文学評論。
- ミステリ評論のなかでも犯罪小説だけを切りとって論じるというのは珍しくとても面白かった。「犯罪の恐ろしさを知る者こそが犯罪小説を書く」とは的を得た表現だと思う。犯罪小説とは個人と社会の対立から生まれ出づるジャンル。更に読みたい名作が増えてしまう(明日のかぜさん)

ミステリから見た「二○二○年」
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【あらすじ】
ミステリ作家は時代から逃げない。
新型コロナのパンデミックによって生活や社会構造が激変した2020年。
この激動の年にミステリという文芸領域がこの時代をどう描き、どう解釈したのか?
新型コロナ、東京オリンピック、分断国家、政治腐敗、失われた三十年、ポリティカルコレクトネスと多様性……
2020年以降の日本を象徴する出来事を扱ったミステリを通し観察することで見えてきたこととは?
圧倒的な読書量と鋭い分析力を誇る著者が、現代日本の歪みに物申す。
- コロナ禍のみならず2020年前後の様々な社会的事象がミステリにおいてどのように描かれていったか、ということをテーマにした非常に読み応えのある評論集。小説以外にもドラマや映画についても触れていて参考になった。帯にあるように、まさに「ミステリ作家は時代から逃げない」のだ。(鹿ノ子さん)